大判例

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東京高等裁判所 昭和34年(ツ)34号 判決

栃木県中央信用組合

原審は、上告人両名が訴外小島光(第一審相被告)のためになした本件身元保証契約は損害担保契約の性質を有し、身元本人である右小島の不法行為によつて被上告人が蒙つた損害は勿論のことその他身元本人の行為によつて被上告人の蒙つた一切の損害を填補することを約した趣旨であること、右小島は被上告人に外務員として雇われ中定期積金の勧誘に従事し、固定給と歩合とを貰うことになつていたが、勧誘の成績が上らず、固定給だけでは生活が苦しかつたので、将来受けるべき歩合及び固定給を前借りした結果、合計金四万一千九百円の借入金とこれに対する遅延損害金債務を負担し未だこれが弁済をしていないこと、及びこの債務は小島と被上告人との雇傭関係に基く債務であるから、これを弁済しないことにより被上告人の蒙つた損害はすなわち被用者である小島の行為によつて使用者が蒙つた損害にほかならないから、身元保証人である上告人両名は被上告人に対し右損害を賠償すべき義務があることをそれぞれ認定したのであつて、原判決挙示の証拠を綜合すれば右のように認定できないことはない。上告人等は、身元保証契約により担保されるべき損害の範囲は被用者が故意又は過失に基く不法行為により使用者に加えた損害に限るべきであつて、本件のように被用者が雇傭関係を離れて使用者に対し手形を差入れて債務を負担したことによる損害はこれを含まないと解すべく、このように解するのでなければ身元保証に関する法律第三条ないし第五条の法意は全く理解することができないと主張するけれども、右法律は、身元保証契約が使用者の蒙るべき将来の損害を賠償することを目的とする契約であるために、その保証責任の存続期間及び責任範囲が長期広汎に亘り保証人にとつて苛酷に失することがあるのを緩和するる必要があるとの見地から、身元保証契約の存続期間を法定し、保証責任の発生及び加重等の原因となるべき事実につき使用者の通知義務を認めると共にこれらの事実のあるときは保証人のために将来に対する解約権を認め、これらの事項につき同法の規定に反し保証人に不利益なものは無効とし、更に裁判所は保証責任の有無及び責任額を定めるにつき諸般の事情を斟酌すべきこと等を定めているけれども、これらの同法の規定からは上告人等の主張するように身元保証人の責任範囲を被用者の不法行為による損害のみに限るべき合理的理由を見出し得ないばかりでなく、同法第一条に「被用者の行為に因り使用者の受けたる損害を賠償することを約する身元保証契約」と規定されていることからみても、同法は被用者の不法行為のみに限ることなく、被用者としての行為、換言すれば被用者対使用者という特別の関係に関連して被用者のなした行為により使用者が受けた損害は身元保証契約の対象となり得ることを示したものと解されるのであつて、原審の判示も右と同様の見解の下に、小島の被上告人に対する本件債務は、小島がこれを負担するに至つた事情に鑑みるときは、同人と被上告人間の被用者対使用者という特別関係(雇傭関係)に全く無関係に負担したものではなく、その特別関係に関連して負担したものであると解し、本件身元保証契約の趣旨によれば、このような債務の不履行による損害は身元保証人の保証責任の範囲内であると判断したものであることは明らかであり、この判断は正当である。本件身元保証契約が被用者の不法行為による損害に限り担保する趣旨のものであることは原審の認めないところであり、被上告人に対する小島の借入金債務についてその支払のために約束手形が差入れてあること及び訴外小島富恵(第一審相被告)が連帯保証をしていることは毫も上記の判断を妨げるものではない。

原判決には所論のような法令違背、理由不備又は理由そごの点はなく、論旨は採用できないとして本件上告はこれを棄却。

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